汗が出る・出ないは、自分の意思ではどうにもこうにもコントロールできません。「気合いで汗を止める」とか、そういうことができると本当に楽なのですが、残念ながら無理ですよね。
どうしてできないのか?それは、汗をつかさどるのが「自律神経」という自分の意思でコントロールできないタイプの神経系統だからです。
脇汗があまりにもひどいという人は、この自律神経が乱れているせいで汗の量が多くなってしまっている可能性があるのです。
「でも、汗も自力じゃ止められないし、自律神経も自分の意思でコントロールできないんじゃ、手の施しようがないんじゃない?」
実は、自律神経そのものは自分の意思ではどうにもならないのですが、それを「整える」ために改善できるたくさんのポイントがあるのです。
ここでは、自律神経が乱れるとなぜ汗が出るのか、そして乱れてしまった自律神経を整えるための方法をご紹介していきます。
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自律神経って何?
自律神経という名前は聞いたことがあるという人が多いと思いますが、実際にどのような働きをするのかは知らないという人もいるでしょう。
実は、自律神経とは人間が生きていくうえで必要不可欠な存在。たとえば、心臓を動かすとか、食べたものを消化するとか、血液を循環させるとか、そういった「自分の意思ではどうにもならないけれど、生きていくのに必要な体の動き」をつかさどる働きをするのです。
「自律神経失調症」とか「自律神経のバランスが崩れる」とかいうのを聞いたことがあるかと思います。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があって、片方が優位になっているときはもう片方は働いていない状態になります。交感神経と副交感神経は真逆の働きをするのですが、当然どちらか一方だけが常に優勢な状態になるというのは好ましくありません。交感神経と副交感神経がバランスよくそれぞれの働きをすることで、私たちの体は調子を保つことができるのです。
交感神経と副交感神経の違いは?
交感神経とは、私たちが活発に活動しているときに優位になる神経。主に昼間、体を動かしているときや、運動しているとき、緊張しているとき、ストレスを感じているときなどに優位に働きます。
心拍数が上昇したり、呼吸が速くなったり、汗がたくさん出たりします。
これに対して副交感神経は、私たちがリラックスしているときに優位になる神経。主に「休息」の時間、食事をしているときや、お風呂にゆっくり浸かっているとき、睡眠時などに優位に働きます。
心拍数や呼吸はゆっくり穏やかになり、汗はほとんど出ません。
交感神経と副交感神経がバランスよく交互に働いていれば何も問題はないのですが、交感神経ばかりが活発になりすぎて、本来体を休めるべき時間に副交感神経がうまく働かない状態になると、いわゆる「自律神経失調症」になってしまいます。交感神経が優位になりっぱなしなので、常にイライラしたり、動悸やめまいがしたり、筋肉が緊張したり、よく眠れなかったり、汗をたくさんかいたりといった症状が出るのです。
つまり、汗がたくさん出るという場合、自律神経のバランスが崩れてしまっていて、副交感神経が上手に働いていない可能性があるのです。
自律神経を整えるには?
自律神経のバランスを整えて、停滞してしまっている副交感神経を適切に働かせることができれば、多汗の症状(それ以外のイライラや動悸なども)も改善される可能性が高くなります。
では、副交感神経を上手に活動させるにはどうしたらよいのでしょうか?
呼吸を意識的にゆっくり行う
呼吸というのは、自律神経によってつかさどっているにも関わらず、唯一自分の意思でコントロールできるものです。心臓の鼓動を早くしたり遅くしたりというのは自分の意思ではコントロールできませんが、呼吸を早くしたり遅くしたりというのはできますよね。
交感神経が優位になっているときというのは、呼吸のペースも自然と早くなりがちです。なので、逆に意識的に呼吸をゆっくり行うことによって、交感神経を抑えることができるのです。交感神経が抑えられると、逆の副交感神経が優位になります。
呼吸は自分でコントロールできるとは言っても、ふだんはそこまで意識していないと思います。1日中ずっと呼吸に意識を向けるというのは難しいと思いますので、せめて通常であれば副交感神経が優位になるべき「リラックスの時間」=入浴時や、就寝前などに少しだけ意識して呼吸をゆっくり行うようにしてみましょう。
副交感神経を高める食べ物を積極的に食べる
即効性には乏しいかもしれませんが、副交感神経を高める効果がある食べ物を摂ることで長い目で見て自律神経のバランスを整えることができます。
副交感神経を高める食べ物の代表格は、次の通りです。
ホルモンバランスを整える効果のあるイソフラボン
納豆や豆乳、豆腐などの大豆製品
消化の時間が長い食物繊維の多い食べ物
玄米や豆類、きのこ類、海藻類など
副交感神経を刺激する酸っぱい食べ物
お酢や梅干し、レモンなど
脳を鎮静化する神経伝達物質(セロトニン、ギャバ)を作る(含む)食べ物
大豆製品、アスパラガス、発芽玄米、トマト、カボチャ、バナナなど
また、食事中というのは副交感神経が優位になる時間です。なので、よく噛んでゆっくり時間をかけて食事をすることも忘れずに。
自律神経を整えて脇汗を抑える食べ物について詳しくはこちら
生活リズムを整える
自律神経のバランスとは、体の「活動」と「休息」のバランスです。なので、「朝ちゃんと起きて、夜はぐっすり眠る」という一見当たりまえすぎることこそが、実は自律神経を整えるためにはすごく重要なのです。
夜更かしばかりしていて慢性的な睡眠不足だったり、朝いつまでもダラダラ寝ていたり、食事の時間が不規則だったりすると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなってしまうのです。
規則正しい生活を心がけるのは当然ですが、働くときは働く、遊ぶときは遊ぶ、休むときは休む!とメリハリのついた生活を意識してみましょう。
爪もみ
けっこう侮れないのが、この爪もみ。
日本自律神経病研究会の理事長、福田稔医師が考案した方法で、やり方はいたってシンプル。手の指の爪の付け根の部分を10秒ずつ順番に押して刺激します。これだけですが、実は指の先には神経が集中しているので、効率よく副交感神経を刺激することができるのです。寝る前にこの爪もみを行うと、けっこう心地よい眠りにつくことができますよ。それだけリラックス効果が高いということです。
ただし、1つだけ注意点があります。実は、薬指の先端を押すと、副交感神経ではなく「交感神経」が刺激されてしまうのです。なので、副交感神経を高めてリラックスしたいときには、薬指はもまないようにしましょう。交感神経が刺激されて代謝が活発になるので、汗を抑制するどころか、逆にたくさん汗をかいてしまうという事態になりかねません!
ストレスを溜めこまずに発散するようにする
自律神経のバランスを崩す大きな原因が、「ストレス」です。現代社会では、右を向いても左を向いてもストレスに当たると言ってもいいくらい、私たちはストレスに囲まれて生きています。人や物事だけではなく、「暑すぎる」なんていうのも十分ストレスになりうるのです。
ストレスを受けているときというのは、交感神経が高まっている状態になります。一時的なものであれば問題ありませんが、ストレスが長く続いて交感神経が過剰に高まった状態になると大問題。本来「休息」を取らなければならない時間になっても、交感神経のスイッチが切れずに、副交感神経の出番がどんどん減っていってしまうのです。常にストレスにさらされて体や心が緊張している状態だと、汗をかきやすくなりますよね。これは交感神経がガンガン働いているからなのです。
ストレスをまったく受けないようにするというのは不可能なので、溜めこまずに発散する方法を見つけるようにしましょう。
体を動かすとか、大好きなものを食べるとか、好きな音楽を聴くとか、仲のいい友達と思いっきりおしゃべりするとか、自分が「スッキリ」「リフレッシュ」できることなら何でもかまいません。
脇汗を抑えたいなら、とにかく自律神経を整える!
脇汗と自律神経は切っても切れない関係です。
だれでも汗はかきます。でも、必要以上にたくさんの汗をかいてしまう場合というのは、ほぼ100%この自律神経に問題があるのです。
自律神経を整えることは、汗を抑える効果だけではなく体や心の調子を整えることにもつながります。
・規則正しい生活
・ストレスの発散
これらをベースに、上手に副交感神経を高めて、リラックスできる時間をたくさん作るようにしましょう。1日中ストレスや緊張やイライラに囲まれていると、汗も止まりませんからね!